本 片岡義男『愛してるなんて とても言えない』

○愛してるなんて、とても言えない
650ccオートバイの予備校生とポルノ女優 チンピラと親玉(?) 赤いシボレーカマロ
若いなー! ストーリーもまあよくある感じか でも映像化したらちょっといいかも ラストシーンをどう撮るかだな

○ワン・キッス
深夜の散歩 あっけないラスト そんな予感がした(片岡らしい)

○コバルト・ブルー
主人公を含めて四人が死んだナナハン その恋人と仲間たち 崖の上での葬送
オートバイの描写が続く わかる人にはたまらないのだろう

○まっ赤に燃えるゴリラ
源太郎がいかにも昭和の男(漢)というキャラでいい(笑) 昭和の映画っぽい

ふと、あすなひろしがマンガで描いたらピッタリなのでは? と思う 夏子も良さそう ケン坊はどんな感じになる? ラストシーンも決まりそう 次に読むときはあすなの画で脳内再生されそう


自分が好きないろんな人と片岡のつながりを知るとうれしい 堀江敏幸、川上弘美、小西康陽、古市コータロー、吉田篤弘もだっけ? そんなふうにあすなひろしともつながってたらと思わずにいられない

※片岡とあすなを同時に語っている人いないかとググってみたら自分だった(笑)
https://booklog.jp/users/rocketman3-55/archives/1/4253035221

片岡の男性キャラは無口でクール、やや内省的な印象が強いけれど、「馬鹿が惚れちゃう」やこの「真っ赤に燃えるゴリラ」のような昭和映画、ちょっとハードボイルドっぽいキャラクターの作品もあるじゃないか 新しい視点 まさにあすなひろしとのかけ合わせを思いつくような

他にもあすなのリリカルな表現と合う短編あるだろう 『夏と少年の短篇』のなかの作品はどうだ?

コータロー自伝のあとがきみたいに 片岡があすなのことを書いたらどんなふうになるだろう?

映画 『汚れた英雄』絶世のハンサムと迫力のレースシーン

★★★☆☆

とにかく草刈正雄がかっこいいー! フルヌードのバックショットも出てきて女性ファンにはたまらんのではないか(笑)。かっこいい俳優はたくさんいるが、僕のなかで「ハンサム」という言葉が一番ピッタリ来るのが彼だ(あと、若い頃の谷原章介)。『復活の日』のほうが若いなと思ったらあっちは1980年、こっちは1982年だった。

タイトルからもっと極悪のピカレスクロマンを想像していたが、とくにそういうことではなかった。原作だと女性を次々と虜にしてスポンサーにしていくとあり、映画でも木の実ナナ、白人女性、あと最初のほうで大会社令嬢とのデートがほのめかされていたりしてたけれど、「汚れた」という印象は受けなかったな。

オートバイレースのことはほとんど知らなかったが、レースシーンがとてもかっこよかった。車載カメラによるテール・トゥ・ノーズやサイド・バイ・サイドの映像は迫力があり思わず「うおー!」と声が出た。

ローズマリー・バトラーの主題歌はアガるなー!! 速いテンポのエイトビートだと思ってたら違ったけど。

『復活の日』もそうだったが、カネかかってんなー!という印象。とくに主人公の住むプール付きのコンクリ打ちっぱなしの部屋はセット? そこだけなら最近のSF映画かと思うくらいにスタイリッシュだった。角川映画というとどうにも話題先行というイメージがあったが、角川春樹の中には洋画に負けないような邦画を、というような願望があったのではないか?

伊武雅刀の役名がテディ片岡になってるけれど、片岡義男と何か関係があるのかな?

映画 『女番長 野良猫ロック』

★★★☆☆

ストーリーとしてはとくにどうこういうことのない作品なんだけど、1970年の新宿とその頃のファッションが観られるだけでいいじゃないの(笑)。

新宿はまだ高層ビルがちょっとしか建ってない時代。建設中の建物も映ってたっけ。

和田アキ子の演技はちょいといただけないけれど、梶芽衣子はかわいいし、ナンバーツー范文雀もいいオンナだし。

あと、劇伴BGMがロックだったりジャズだったりでめちゃくちゃかっこよくてシビレた。サントラとかないのかしらん。モップスもかっこいいなー。

バイクとバギーのカーチェイス。バギーってあの頃っぽい。プラモデル作ったな。いつの頃からか見なくなったなあ。

鴨川つばめ「ドラネコロック」はここから取ったのかが激しく気になる。

(20210127)

本 片岡義男『ときには星の下で眠る―オートバイの詩・秋』

★★★☆☆

「幸せは白いTシャツ」から続けて読んだ。オートバイ小説だけれど、「幸せは~」と違って、旅ではなくオートバイに乗る(記憶のなかの)高校生たちの物語。オートバイで走る描写がけっこう細かく、自分はよくわからないが、オートバイ乗りにはたまらないんじゃないだろうか。「排気の香り」というワードにしびれた。


秋という季節、高原、オートバイの描写、三人の死者の思い出により過去と現在の往還。

途中でオートバイレースがあったり、高原を走るところでもかなり細かいオートバイの描写。エンジンの放熱で暖を取るなんて、オートバイ乗りにしかわからないんじゃないか。逆に言うとオートバイ乗りのために書かれた小説とも言えるわけで、オートバイに乗らない自分にとっては旅を十分に感じさせた「幸せは白いTシャツ」のほうが深く響いたのは当たり前か。

例えばこれがロードバイクに乗る小説でここまで細かい描写がされていたとしたらどうだろう? オートバイという内燃機関であるエンジンを積んだ機械と自転車では風合いがだいぶ変わるのは間違いない。もっとフィジカルになるのかな。

作中では人とオートバイが一体化してどこまでが自分でどこからがオートバイかわからなくなる感覚が描かれていた。これ、「ヨコハマ買い出し紀行」のスクーターでも同じような感覚が描かれてたな。オートバイならではか。自転車は自分で漕がなきゃいけないからちょっと違うだろう。

前半で主人公が出会った美少女が病死してしまい、レースの優勝トロフィーを墓前に捧げ、「応援してくれてありがとう。だから一着」というところはグッと来た。

室謙二という人の解説文がこの作品や片岡小説のことをとてもうまく言い表していて、さすがプロは違うなと思ったら、片岡自身もそれについて触れていた。

(20210326)