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2013/02/05 / Rocketman3

映画「ザ・ライト・スタッフ」 – 空に、宇宙に「穴」を開けた男たちのドラマ

観るのは3回目だ。前2回は「うう、いいんだけど、なにかこう、決定打に欠けるというか……」というモヤモヤした印象だった。どなたかがamazonレビューに書いていたが、たしかに3時間超の長丁場のなか「ここぞ!」というような映画的盛り上げにはやや欠けるだろう。なのでこういう宇宙開発ものにそれほど興味がない人にとっては、「あれ?」というようなことになるかもしれない。

しかし今回は三度目の正直、おまけに僕自身が宇宙開発ものにすっかりハマっているわけで、もう感動した、涙が出た。たとえそれが、ちょっと酔っていたにしても。

(以下、映画の細部について触れる箇所がありますので、未見の方はご注意ください)

 

「世界で最高のパイロットは誰だい?」
「フフフ」
「なあ、最高のパイロットは?」
「……」
『目の前にいるさ!』

 

ネバダ砂漠のど真ん中にある空軍基地へとクルマを走らせる中での、ゴードン・“ホットドッグ”クーパーと奥さんのお決まりのやりとりだ(このあと、もう一度このやりとりが出てくる)。

そして映画の後半、ジョンソン副大統領主催のヒューストン歓迎パーティーで記者たちに「最高のパイロットは?」と聞かれたクーパー。すかさず奥さんをチラリ、奥さんもニコリ。

このやりとりが(すでに伏線として)なされているので当然それが出ると思った。だが、ふと遠くを見つめるような目で「たくさん知っている」と、パンチョの店の壁にかかった名もなきパイロットたちのことを語り出すクーパー。

「その中でももっとも最高のパイロットは」とイェーガーのことを語る。宇宙飛行士としてはまだ飛んでない彼からすれば、常に危険と隣り合わせになりながら自分の信ずる道を進み続けるイェーガーはやはり特別な存在だったのかもしれない。

 

だがその語りは記者たちが望む答えではない。別の記者の質問でふと我に返った彼は「目の前にいるさ!」とお決まりの文句で笑ってみせる。その満面の笑みから、イェーガーによる最高高度への挑戦へとシーンは繋がっていく。

マーキュリー計画最後の宇宙飛行士として、これから飛び立とうとしているクーパーが語っているにもかかわらず、記者たち(=マスコミ → 世間)にとっては、そんな高高度記録に挑戦し続けるイェーガーのことなどはどうでもいい、時代遅れなことであるという状況において、それでもひとり挑戦するイェーガーのシーンに繋がっていくところが、この映画の数ある名シーンの中ではやっぱり最高だ。

 

そして時代はマーキュリー計画からジェミニ計画へと進んでいく。ジェミニ計画は衛星軌道に複数の人間を送り込み無事回収することが目的となっており、衛星軌道に人間がいることはすでに前提となっている。

この映画で描かれているのはその「前提」に向け、まさに人類が「空に穴を開けて」(イェーガーの奥さんのセリフ)、地球の重力を振り切り未知の宇宙空間へと船出する過程である。それはイェーガーの音速への挑戦から始まり、彼の高高度への挑戦と失敗、クーパーの衛星軌道への打ち上げで幕を閉じる(「Go! Hotdog Go!!」)。その意味でもこの映画の主役はイェーガーとクーパーであると思うのだ。

 

ジェフ・ゴールドブラムともうひとりの凸凹コンビが宇宙飛行士をスカウトしにパンチョの店にやって来たとき(スーツの上着を間違えるギャグは最高)、イェーガーともうひとり、初のマッハ2を超えたパイロットであるスコットは「ただのカプセルに詰め込まれて打ち上げられるなんて御免だね」と言って誘いを断ってしまう。だが実際には大学を出ていないイェーガーはそもそも選考対象には入っていなかったというのはなんとも皮肉だ。

彼ら空軍パイロットたちはマーキュリー計画に対して常に皮肉交じりに話している。着水に失敗したグリソムを「あれじゃあチンパンジーと同じだ」と言って冷笑したとき、ひとりイェーガーは「危険があることを知ってて乗り込むのはサルとは違う。グリソムはよくやったよ……」と彼を擁護する。何気にいいシーンだ。

 

F-104での挑戦を最後に予算はヒューストン(=宇宙開発)へ回されることになってしまう。ソビエトが持つ最高度記録に挑み、星の姿を垣間見るも墜落してしまうイェーガー。ジェット機で星に届きそうになるももはや飛行機の時代ではなく、人類は「いかに早く飛ぶか」から「いかに(地球から)遠くへ行くか」に移ってしまったところで、挑戦に失敗して墜落するというのはちょっと象徴的だ。

いろんな方のブログやヤフー掲示板のトピを見ると、やはりみなさんこのイェーガーの最後の挑戦~墜落~黒焦げになりながらの生還、を一番のシーンとして推している。それはもう確かにそのとおりで、映画のシーンとしてのクライマックスはまさにそこだ。

 

でも僕にとっては、記者たちからの質問に答えるクーパーの言葉のひとつひとつ、本人も我知らず口をついて話しているようなその言葉が一番胸に響いた。

パンチョの店に写真が飾られているのは、音速の壁を超えようとして事故死をしたパイロットたちだ。それに対してライトスタッフは全米から集められた「正しい資質」を持つ、宇宙開発時代の7人の英雄たち。でもその背後には数多くの、アメリカ国民に名前を知られることなどなく散っていった、数多くのパイロットたちがいる。

最後のライトスタッフであるクーパーが、そうした名もなきパイロットたちのことを我も忘れて語る。ここに、そのクーパーのどこか遠くを見るような瞳の光に、これまで積み重ねられてきたさまざまなシーンで描かれた時間の積み重ねがすべて映っているような気がして、思わず涙が出た。

クーパーを演じたデニス・クエイドの、口角を上げるニッコリとした笑顔が全編を通してなんとも印象的。

 

もうひとつ、お決まりのやりとりがある。

イェーガーがテスト飛行にチャレンジする前にいつも同僚のリドリーと交わす会話。

 

「なあ、ガム持ってるか?」
「ああ、一枚ならあるぜ」
「くれよ、あとで返すからさ」
「いいとも」

 

いかにもアメリカっぽくていい。あとで返す、つまり無事に戻ってくるという願掛けなのだ。実際にあったエピソードなのかな? と思ったが、ウィキペディア を見るとどうやらそうらしい。なんともイカしてるじゃないか。リドリーからもらったガムをくちゃくちゃ噛みながら、テスト機に乗り込むイェーガー=サム・シェパード。そうだ、「天国の日々」だ。いい役者だよなあ。

 

もちろん映画では、ジム・グレンやアラン・シェパード、ガス・グリソムなど他のライトスタッフ、そしてその妻たちにも焦点をあてて様々なエピソードを描いている。女優たちに注目して観ると、宇宙飛行士の妻という、もうひとつのドラマが浮き上がってくるだろう。

でも僕にとっては、星に手が届きかけるも墜落するイェーガーと、単独での衛星軌道周回記録を樹立したクーパー。いつもクールなまなざしのサム・シェパードと、いつも満面の笑みをたたえたデニス・クエイド。お決まりのやりとりを粋にキメる、そんな男たちを描いた素晴らしい映画となった。

 

 

 

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