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2010/11/30 / Rocketman3

片岡義男 「最愛の人たち」

(※20000829からのお蔵出し 少しだけネタばれ)

 

 

この物語は「大人の恋愛もの」ではない。芙美子を頂点として後藤と川島の3人が描く正三角形の物語。しかもそこには世俗的な恋愛をはるかに超えた観念的恋愛関係が成り立っている。

物語はJRが出てくるように現代なのだが、「東京物語」「原節子」そして日本映画最後のスター女優といったワードから、現在が徐々に過去へ溶けだしていき、結果として非常にいい意味でのノスタルジックな雰囲気を醸し出している。

片岡作品でよく語られる女性の外面及び内面のきちんとしたスタイルは、現代が舞台となっている場合、ともすると「おシャレ」で「キザ」なものに誤解されが ちである。しかしこの作品ではひとつのキーとなっている原節子に日本でもっとも美しかった女性像を重ね合わせることによって、片岡が言いたかったであろう 観念としてのスタイルのようなものが、うまく表現されていると思う。

前述の3人に恵子さん(片岡作品常連の女性。やっぱり空手のインストラクター)を加えた4人が織りなす現在と過去の物語に、後藤が作り出すもうひとつの4 人の物語がうまく混ざり合い、夏という季節(千倉の海岸という設定も非常にうまく作用している)の中で、過去と現在、虚と実がえもいわれぬ多重的なストー リーを描き出している。

小説家と写真家、そして完璧な美しさをもった戦後の自由な日本女性という片岡作品の重要な要素をすべて盛り込んだ作品である。

物語の終盤近く、後藤が創造したストーリーの中の芙美子・後藤・川島が作り出した完璧な三角形は実は一触即発の関係をも孕んだものであるが、現実の3人が 観念としての関係性をとるというシーンはこの物語全体のひとつのラストシーンである。ヤマをそこに配し、ラストは中華街での穏やかな描写でまとめるあたり もさり気ない演出である。

さらに川島と恵子さんの手紙のやりとりの一番最後に恵子さんが、自分が撮った川島の写真を見ることでレンズのこちら側の自分を感じるというラストが、(レンズという特殊性を通しているせいもあるのか)はっとさせられるほど印象的である。

片岡作品の本質をもっともよく表している作品かもしれない。

 

 

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